marumoです。今回から新しいシリーズとして、「プロセスケミストとは何か」を全10回に分けて、できるだけ一つひとつのテーマを深掘りしながらお伝えしていこうと思います。
第1回である今回は、その総論として「プロセスケミストって結局どんな仕事をしているの?」という一番基本の疑問に答えます。学生時代の自分がこの記事を読んだら、就活の視野がもう少し広がっていただろうな、という思いを込めて書きました。
プロセスケミストとは、「量産できる作り方」を設計する仕事
プロセスケミスト(プロセス化学者)とは、一言で言うと「医薬品の原薬(有効成分)を、工業的に大量生産できる製法にする」仕事です。
新薬の元になる化合物は、まず創薬研究の段階でフラスコサイズ(ミリグラム〜グラム単位)の実験によって「作れること」が確認されます。しかし、その作り方をそのまま工場でトン単位のスケールに拡大しようとすると、ほとんどの場合うまくいきません。反応の再現性、安全性、コスト、環境負荷、品質の均一性など、フラスコの中では見えなかった課題が一気に噴き出すからです。
ポイント: プロセスケミストは「化合物を作れるかどうか」ではなく、「安全に・安定して・大量に・妥当なコストで作れるかどうか」を追求する仕事です。創薬研究とはゴールの置き方がそもそも違います。
具体的にどんなことをしているのか
僕自身の実務をベースにすると、プロセスケミストの仕事は大きく以下のような要素で構成されています。
- 製法ルートの検討:同じ化合物を作るにも、原料や反応の組み方は何通りもあります。より安全で、より安価で、より少ない工程数で作れるルートを探します。
- 反応条件の最適化:温度、濃度、試薬の当量、滴下速度などを検討し、反応の収率や不純物の量をコントロールします。
- スケールアップの検証:ラボスケールで確立した条件を、パイロットスケール、そして工場のスケールへと段階的に拡大しながら、問題が起きないかを確認します。
- 安全性の評価:反応熱の挙動や、発火・爆発のリスクなど、大量生産時に事故につながりうる要素を事前に洗い出します。
- 他部門との連携:分析部門、品質保証部門、工場の製造部門など、多くの関係者と一緒にひとつの製法を仕上げていきます。
こう並べると分かる通り、プロセスケミストは「化学反応を考える」だけの仕事ではありません。安全性、コスト、品質、他部署との調整まで含めた、いわば「ものづくりのプロデューサー」のような側面も持っています。
学生時代に抱いていたイメージとのギャップ
正直に言うと、僕は学生の頃「プロセスケミスト」という職種の存在すらほとんど知りませんでした。就活で初めてこの仕事を知り、実際に働き始めてから、想像していたものとのギャップをいくつも感じました。
- 「新しい反応を発見する」仕事だと思っていた→実際は、既知の反応をいかに実用的に組み合わせ、磨き上げるかが仕事の中心でした。
- 一人でコツコツ実験するイメージだった→実際は分析・品質・製造など多くの部署とのやり取りが多く、コミュニケーション量は想像よりずっと多いです。
- 「良い製法」=「収率が高い製法」だと思っていた→実際は、収率だけでなく安全性・コスト・環境負荷・再現性まで含めたバランスで評価されます。
このあたりのギャップは、大学の研究活動だけを見ていると気づきにくい部分だと思います。だからこそ、これから就活をする方には早いうちに知っておいてほしいと感じています。実際に現場で働いている人の声を知りたい方は、中の人の声を聞いて受かる転職を実現するなら「ワンキャリア転職」
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まとめ
プロセスケミストは、創薬研究で生まれた化合物を「安全に・安定して・大量に作れる形」に磨き上げる仕事です。化学の知識はもちろん必要ですが、それだけでなく、安全性やコストへの意識、他部署との連携力まで求められる、意外と幅の広い仕事だと感じています。
次回以降は、「研究職との違い」「1日のスケジュール」「スケールアップとは何か」など、今回触れきれなかったテーマを一つずつ深掘りしていく予定です。プロセスケミストという仕事の解像度を、一緒に上げていければと思います。
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